論文が「Japan Journal of Medicine」に掲載されました。

本文

要約
 ビタミンB1欠乏が原因で起こる「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」と呼ばれる疾患の発症メカニズムについてまとめた論文です。最近、脳のエネルギー源として、ケトン体や乳酸が重要視されていますが、やはり、脳にとってはブドウ糖が最も重要な栄養素です。エネルギー源としてだけでなく、エネルギー媒介物質、情報伝達物質、核酸合成などの様々な構成要素の基本原料として、ブドウ糖がいかに重要であるかを詳しく解説しています。ビタミンB1は、ブドウ糖代謝に関与する補酵素という印象が強いですが、実はトランスケトラーゼの補酵素でもあり脂質代謝にも関与します。「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」の発症には、脂質合成低下によるオリゴデンドログリアの障害(脱髄)が関与しているという仮説があり、本稿ではこの仮説をペントースリン酸回路のリボース5リン酸生成の視点から検討します。